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西条に秘書室の仕事の説明を受ける祐一。
祐一の仕事内容は、専属秘書と言われるヤツで、上司のスケジュール管理や出張時のお供、書類作成に郵便物やメールのチェック、冠婚葬祭等まで含めるので要はなんでも屋、マネジャーである。
やることが多岐に渡る上に守秘義務も付随するため、人選は慎重に行われ決定するがそれなりに給料も破格なので、この会社ではそうそう簡単になれる訳ではないらしい。
――ていうか、話を聞くと、密偵や体術を使わない忍者みたいだな・・・
ちょっとだけ遠い目になった祐一である。
「で、まあ、経理課で優秀な君を引き抜きしたのには理由が色々あるらしいんだけど、君が一番知ってるって社長は言ってたんだけどね。なんか思い当たるフシがあるんじゃない?」
西条が首を傾げながら腕組みをする。
「ああ、多分ですけど。思い当たる点はありますね」
恐らくは経理課全体が祐一1人に責任を持たせてしまう体制になりつつあるのが問題なのだろう。
ある程度手を抜けばいいのかも知れないが、ついつい完璧に祐一がやってしまう為、皆の緊張感がなくなってしまったのが問題なのだろうと自分でも思う。
まるで今朝イチで見たデスク周りが今の経理課を表している様に感じて、祐一は苦笑した。
「自分が抜けたら動かない経理では、会社が傾きますから」
祐一がそう言うと、西条は微笑んだ。
「ちゃんと分かってんだ。良かったわ」
後は、まあ、俺が義理の息子になるからだろう。身内なら守秘義務も守れるからな・・・俺が社長でもそう考えるだろうね。
と頭の中で付け加えた祐一である。
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