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樹専務
専務は会社のナンバー2で社長の代理も果たす権限のあるれっきとした経営者サイドの重役である。
なので、要は社長補佐であり実質は副社長みたいなものだ。
社長不在の時の決裁なども任される重要なポストだが、意外に周知されていなかったりする。
それは祐一の勤めるイシカワ・コーポレーションの専務も同じで、結構目立たない役職のはずなのだが・・・
「専務は社長の弟さんよ。基本的にココは親族経営の会社だからね」
絨毯を敷き詰めた廊下を西条と共に歩いていく祐一。
「普段会長の方は週3日くらいしか会社に顔を出さないんだけどねー、何か面白がってるのかな? 朝から社長をからかってるみたいに見えるんだけど」
首を捻る西条。
「その割には、どうも社長を見てると怒ってる訳でもなさそうなのよね~君よっぽど優秀なのよ。俺の秘書にするって2人共が譲らなくなってさ、間に立ってる専務が困っちゃってるのよね」
ケラケラ笑いながら廊下を曲がると、正面に秘書室と同じような金文字のプレートが『社長室』『会長室』『専務室』とそれぞれのドアに飾ってある。
「この3つの部屋って実はドア2枚ずつ、合計4枚で隔ててあるだけで実は繋がってるのよね」
「はあ。要は間に小部屋みたいなものがあるんですね?」
「そうそう。よくわかってるじゃない。そこが秘書の待機部屋っていうか、給湯室だからね。覚えといて」
西条は専務の部屋のドアをノックした。
「はい?」
「西条です」
「あ、いいよ入ってきて」
結構軽い感じだな、と首を傾げた祐一である。
「「失礼します」」
2人で専務室に入っていく。
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