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「でも、一昨日異世界に行った時、熊モドキみたいな野生生物が目の前に出て来たじゃないですか。あんな事はありませんよ? 映画なんて所詮は作りモノ相手ですからね」
そう言って、首を捻る祐一。
「野生生物? 熊?!」
樹がちょっとだけ引き攣った。
そういや、コイツは魔獣を素手で、しかも1人で撃退した男だったなと隼雄は遠い目になった。
「まあ、スタントマンの方は追々考えたらいいんじゃないかな? それより秘書はどっちに付くかを考えないと。会長も社長も2人共が仕事内容も、出先も全く違うからね〜」
樹が、建設的な意見を述べてみる。どうも忍者と一般人の価値観の違いは、直ぐには埋まらないと考え始めたようだ。
うん。正解。
ちょっとだけ祐一は考えてから、
「樹専務の秘書は駄目ですかね?」
と言った。
結局デスク周りの片付けすら、何も進まないままに昼休みだけが時間通りにやって来た。
「まあ、今日のところは荷物の移動を午後から始めて、仕事の段取りは西条に教わってくれ」
隼雄社長が、眉根を指で揉みながら、午後からの予定を祐一に伝え、不毛な?話し合いは終わった。
「あ。そうだ、今年の夏はアメリカへ撮影に行く予定なんです。最終はハワイへ移動して終了する予定なんですけど、その後、ハワイで挙式とかどうでしょう? 麗奈さんや社長達はパスポート持ってますよね?」
と、終わり間際になって祐一に真顔で質問された時、隼雄社長と樹専務の2人はひょっとすると神谷祐一という男は、トンデモない価値観の持ち主なんじゃないか? と、今更ながら気がついたのは余談である・・・
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