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意外とマメらしい麗奈は、お弁当だけでは無く水筒に温かなお茶も詰めて持ってきていた。
2人仲良く食後のお茶を飲む。
「え、じゃあ、今日から裕一さんは最上階の秘書室勤務になったんですか?」
吃驚して、大きな目を更に大きくする。
「うん。社長と会長の2人がどっちの秘書にするかで揉めててね・・・」
青空に視線を送る祐一。
お疲れのようである。
「裕一さんは、お祖父ちゃんとお父さん、どっちと仕事をしたいんですか?」
「え? 樹専務」
「・・・叔父さんですか」
まあ、そうだろうな、という顔の麗奈。
「社長に却下されたけど」
「そうでしょうね」
2人でため息をついた。
「まあ、俺はどっちでもいいや。なるようにしかならないだろうし・・・ それより、麗奈さんとの時間が減るのが困るかも」
「え?」
「だってどちらかの秘書になることは確実でしょ? 秘書ってマネージャーみたいなもんだし、1日中ほぼ拘束されるだろうから、今日みたいにお昼休みも一緒には取れなくなると思うよ」
祐一のその言葉を聞いてガ~ンと、頭の中に何かが響いた麗奈・・・
突然無言になり、スマホを取り出してLINE に何かを一気に高速で打ち込み始めた。
「?」
その時、四阿の直ぐ横の茂みで、人の気配がした為祐一は如何にも偶然、そっちを見ましたよ、という体で、脚を組み替えながら身体をずらして、視線を向けた。
「ちょっと、押さないでってば」
「やだ、こっちに気が付きそう」
「やばいってば、早く拝んで帰ろうってば」
女性が小声で会話しているのが聞こえてくる。
首を傾げてレッドロビンと槇の木が重なった茂みをじっと見つめながら火の着いてない煙草を咥える。
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