ノンフレームの眼鏡

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「いや、彼は僕と社長の2人共通の秘書だから、社外に連れ出されるのは困るんだよね〜 社外に出ていかれちゃったら隼雄の仕事が止まっちゃうからね〜 ハッハッハ」  コレは不味いぞ、と辰夫も思ったのか、助け舟? を出してきた。 「ほー、中々に優秀な方なんですね。エマさんにそう伝えてくれるかな?」  代表がそう言うと通訳の女性が頷き説明をエマと呼ばれた女優にするが、頭を横にずっと振っている美女。  そして祐一はずっと氷の彫像になり、まるで会長のSPのように後ろに立っている。  インカムから西条の声が 「おーい、神谷君、社長の書類整理の方に回ってくれる? そっちには、今から篠崎が行くから〜」  と指示が入った。地獄に仏とはこの事か! と痛感する祐一。  辰夫の耳元で、『社長の方に呼ばれました』と耳打ちをする。 「うん、分かった行ってくれる?」  穏やかな表情のまま、会長室から直接社長室へ続く控室のドアを辰夫が指差した。  通訳が喋る前に早く逃げろという指示と受け取り、ボランティア団体の代表に一礼するとその場を優雅に、しかし最速で、一目散に逃げ出した・・・  会長室に入れ替わりで入ってきた篠崎が女神に見え、西条のインカムから聞こえる声が天の啓示かと思った祐一である。
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