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そんなわけで一時的に敵前逃亡とでもいうのか、戦略的撤退をした祐一である。
一応、義理の父予定でもある隼雄社長に会長室での出来事を報告した。
「うーわ、お前やっぱモテるんだな〜」
ワハハと笑う隼雄。
「笑い事じゃないですよ、予定では団体の代表だけって事になってたんですから、コッチは大慌てですよ?」
社長室に常備してある秘書用のデスクに座って、大急ぎで書類の整理をして予定をパソコンに打ち込み始める祐一。
「まあ、もうすぐ昼休みだから、逃げるといいさ。第一ボランティア団体のマスコットとしてポスター用の写真を撮るくらいしかその女優には用事は無いんだろ? ウチの会社には全然影響は無いから安心しろ。寧ろウチは寄付をする側だからな。そうそう無茶も言ってこないだろうよ」
がははははと豪快に笑う隼雄社長である。
「やっぱり眼鏡がアレじゃないと顔が誤魔化せませんよ〜」
「アレなあ~、アクの強いお笑い芸人みたいで俺は好きなんだがなあ。西條の主義に反するんだろ? 美形で揃えたいっつうヤツな」
「そうらしいです。いい迷惑ですよ〜」
ノンフレームのPC眼鏡のブリッジを中指でクイッと持ち上げながら打ち込みを続ける祐一。
「この部屋から外に出るのが今日はちょっとだけ怖いです・・・」
そう言って、ため息をついた。
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