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そしてやって来る、嵐を呼ぶ女!
12時だ。お昼だ! 麗奈に会いに行ける時間である。
色々と突っ込みどころ満載の午前中の業務だったが、件の黒縁眼鏡をかけると、秘書室のドアをそっと開けて廊下に誰もいないことを確認する祐一。
「そこまで警戒しなくてもいいんじゃないですか?」
後ろの自席に座る篠崎が、お弁当を広げながら呆れた口調で祐一に声を掛ける。
「ただ、ちょっとだけ、日本産のイケメンに一目惚れしただけじゃないですか? あの女優さんも悪気は無いと思いますよ」
そういうことになったんだね、と納得の祐一。
「会長も代表も、神谷さんが孫と婚約してるからって説明してましたよ。日本人は恋人以外と2人きりで出かけたら二股って周りから思われて立場的に困るからって説明もしてましたし」
ケラケラ笑う篠崎。
秘書室勤務のメンバーは元々麗奈が社長令嬢ということは知っている為、彼女の婚約相手が祐一だということは彼が転属した翌日には全員に知らされている。
「イケメンも大変ですね」
「篠崎さんも大変でしょ?」
「ええ、まーね。慣れましたけどねえ」
ウンザリした表情の篠崎。最初見た時は暗い人かなと思っていたが、話すと面白い人で、彼女も眼鏡を外したら凄い美人だった。
なので、祐一の今の状態に同情的でもある。
「海外の人って、日本人の感覚とズレてるからこっちの言い分聞いてくれませんからねえ」
天井を見つめて嫌そうな顔をする。彼女も色々ありそうだ・・・
「まあ、早く行かないと麗奈さんと会う時間減るわよ」
呆れた口調で西条室長も声を掛けてきた。
「じゃ、行ってきます」
ドアの隙間からスススっと出ていき、非常階段に向けてダッシュで走っていく祐一。
「ねえ、まさかと思うけど神谷君は非常階段で1階まで降りるのかしら?」
「さあ?」
篠崎と西條の呆れたような声が後ろで聞こえた。
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