そしてやって来る、嵐を呼ぶ女!

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 一目散に階段を駆け下りる祐一。  駆け下りるというか、手すりの上を飛び越えてすぐ下の階にピョンピョンと飛び降りていく。  ノンストップなので多分エレベーターと比べるとかなり早いだろう。1階のロビーの非常階段に降り立った時点で、スーツを整えて受付に近づくと、麗奈がいつものようにお弁当の入ったバッグを抱えて待っていた。 「あれ? 祐一さん、今日は階段ですか」  麗奈が緑色の瞳を大きく広げてちょっとだけ驚いている。 「うん。色々あってね」  そう言って麗奈から荷物を受け取り肩に掛けると、有無を言わさず彼女を横抱きにして中庭に全速力で走って移動した。  受付に残された田淵は、何が起こったのかわからない内に見えなくなった2人を探そうとキョロキョロしていた・・・  一方運ばれていく麗奈は 『こここれはっ! お姫様抱っこと言うやつでは?』  と、思いながら目を回していた。  顔を赤くする暇もなく、気がつけばいつもの四阿のベンチに着いて座っている自分。 「一体何があったんですか? 私、いつの間にかココに居るんですが・・・」 「ごめん、ちょっと色々あって、あんまり人の目に付きたくなかったんだよ」  謝る祐一に、呆然としている麗奈だった。 「じゃあ、そのエマさんという方はまだ会社の中にいるってことですか?」 「いや、もう帰ったとは思うんだけど、何しろあの業種の人達って何するかわかんないから」  麗奈の焼いた、だし巻き卵を食べながら眉をしかめる祐一。随分と芸能人を信用していない口振りである。 「用心する事に越したことはないんだよね」  何かを思い出すように苦笑いをした。
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