偶に『漢』見せます

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偶に『漢』見せます

「ちょっとちょっと美奈、いきなり空手チョップは駄目でしょうが。他所んちの子よ」  慌てて仲裁に入る女神様(アイーシャ)。  アイーシャが普通の人に見える・・・ 「だって、祐一さんの腕を引っ掴んでさ、偉そうなんだもん! コイツ!」  異世界産女神と日本人のハーフの美少女がその青い目を釣り上げる。  ミナはいい具合に日本人の可愛らしさが混ざっていてかなり国民ウケのイイ可愛いさなのだが、なんにしろ気が強い。  女王様である。  気に入らないものは徹底的に噛みつくため、樹専務曰く『急に狂犬になる』んだそう・・・  これか、と額を抑える祐一。  そしてふと横に座る麗奈を見ると、同じように額を抑えていた。  祐一はこんな大騒ぎの最中なのに、同じ格好をしている彼女を見て何だか妙に嬉しくなった。  目の前では美奈とエマが睨み合っているし、会長と代表は苦笑いをしている。  通訳の女性は暫く呆然としていたが、何とかこの場を納めようとエマに話しかけていた。  やれやれ、と思いながら祐一が英語で目の前で興奮している女性、エマに声を掛ける。 『俺は確かに祐一だけど、君は誰? 俺は君を知らないし、デートの約束をした覚えもないよ』  祐一の流暢な英語で、覚えていないとハッキリ言われ目を見開くエマ。 『覚えてない?』 『覚えていない』 『3年前の映画で殺陣を教わった、エマ・ホーソン!』 『俺は俳優じゃなくて俳優の代理で出演者ではない。だから誰も覚える暇はないし、君にとっては残念なことかもしれないけど君は俺にとって行く先々で会う大勢の中の1人でしかない』 『そんな。お嫁さんになるって私言ったのに!』 『俺の妻になる人はこの人だ』  祐一は麗奈の肩を抱き寄せると、彼女の顔がボンッと赤くなる。 『他の誰も要らない。俺はこの人だけでいい』  優しげな目で麗奈を見つめてその左手を、持ち上げると手の甲に口付けを落とす。 『もうすぐ結婚する』  そう言って目を見開いているエマに握っている麗奈の左手を差出し、指輪がキラリと輝く薬指を見せて、 『コレが証拠』  そう言いながら祐一は冷たい表情でエマを見つめた。
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