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「え、やだなあ、そういうの聞くんですかアイーシャさん」
「だってさ、気になるもん。見たことないわよ? あんなピンクダイヤのティファニーなんか」
途端に美奈が、怯えたように小さく縮こまる。
「そんなに珍しいの? 美奈?」
樹専務が美奈の様子に気がついた。
「う、うん。多分凄い金額だと思う。お姉ちゃんは知らないほうがきっといいと思うよ。着けられなくなっちゃうよ」
どんどん小さい声になっていく美奈に眉をひそめる隼雄と樹。
「宝飾店に金額はくれぐれも誰にも言わないで下さいねって念を押されてるんですよ。同じ金額で作ってくれって注文が来てもピンクダイヤモンドがもう手に入らないからウチも困るし、多分ティファニー側も困るだろうって言われてて。麗奈さんに凄く似合ってたから、買わせて欲しいって無理にお願いしたんですよ」
笑いながら、PCのファイルを纏めて秘書室の全員のスマホに転送する祐一。
「まあ、ロールス・ロイスのファントム位なら買ってお釣りが来るくらいかな? あ、勿論中古のヤツですよ。麗奈さんの指輪は勿論新品でちゃんと鑑定書付きですし、ピンクダイヤはオーストラリアのちゃんとした天然の宝石ですからね!」
待て! と、顔が引き攣る隼雄と樹。
首を傾げるアイーシャ。
やっぱりそうだ、怖い〜〜! と首を引っ込めた亀みたいになる美奈・・・
会長が丁度そこに帰ってきて、
「祐一くんお疲れ様! いやあ、今日は大変だったね。今度からあの団体の寄付金が半額以下で良いらしいからねー。その分ボーナスに色付けてあげるからね!」
と、いい笑顔でそう祐一に向かって言った。
「ありがとうございます! じゃあ、定時になったんで帰ります!」
「うん。お疲れ様! 又来週宜しくね~! あと麗奈がロビーで待ってたよ」
「はい! 失礼します」
祐一が部屋を出ていくときに、ワンコが嬉しそうに尻尾を振る幻覚が見えた気がするのはその部屋にいた全員だ・・・ 多分。
そしてスマホで中古のロールス・ロイスのファントムの金額を調べた全員が、宝飾店の言った通りに何も聞かなかったことにしたのは当然であろう。
更に美奈が、ボーナス毎月渡したげて! と心の中で叫んだのは間違いない。
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