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「麗奈さん、何か困って無い?」
会社の前のコンビニで新しい珈琲豆をカゴに入れながら、雑誌コーナーを見て何やら考えている彼女に声を掛ける。
「え、ああ。クロワッサンにするか、オレンジページにするか悩んでます」
「・・・雑誌?」
「ウ~ン、どっちも捨てがたいんですよね〜」
そういう事ではなくて、と言いたかったが、雑誌は祐一が両方買うことにした。
お弁当の豆知識が増えると、ホクホク喜ぶ麗奈を見ながら、2人で夕暮れが近付く道を手を繋いで歩く。
「先刻さ、廊下で女子社員が麗奈さんを虐めて無かった?」
「あれ? なんで知ってるんですか?」
「ごめん。迎えに行く途中で『お引き取り下さい』って麗奈さんが言ってるのが聞こえたんだよ。そしたら女子社員が3人走ってきた」
祐一は渋顔になった。
「鉢合わせしたんですか?」
麗奈が苦笑いをする。
「ううん。足音がこっちに向かってきたんで、咄嗟に自動販売機の上に隠れたんだよ。麗奈さんに手を出した様子は無かったから。でも顔は見たから、所属と名前はすぐ分かる」
祐一は憮然とした顔になる。
「俺が出ていったら、麗奈さんが却って困ることになる可能性があるからさ」
麗奈を見ながら
「いざとなったら闇討ちする」
祐一、本気で物騒である。
麗奈が引き攣り笑いになった。
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