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祐一が珈琲を入れ始めると、いい香りが部屋に立ち込めた。
「美奈が私が結婚するって事務所で喋ってたらデザイナーさんがドレス作らせて欲しいって言い出したらしくって」
「へえ。えらく気に入られたね」
「て、いうか。ちょっと変わった人なんですよね。でも凄く有名みたいです」
何やら不思議な言い回しをする麗奈に、首を傾げる祐一。
「一度、美奈と一緒にアトリエにおいでって言ってくれてるらしいです」
「ふーん。じゃあ、今度一緒に行こうか。美奈ちゃんの予定も聞いてみないとね」
祐一は又柔らかく微笑んだ。
珈琲を飲みながら、雑誌やスマホで人前式の事を調べているうちに、いつの間にか麗奈を送っていく時間になった。
「あ、もう9時過ぎちゃったね」
「楽しい時間ってすぐに過ぎちゃいますよね」
ソファーで横に座る麗奈が唇をちょっとだけ尖らしてムッとした表情をする。
『あ、可愛い・・・』
なんとなくその、プルンとした美味しそうなピンク色の膨らみに吸い寄せられるように、顔を段々近づける祐一・・・
急に黙った祐一の顔が少しずつ近付いてくるのに気がついて、麗奈の頬が朱に染まり、そっと目を閉じた。
『ピンポーン!』
玄関チャイムが鳴って、飛び上がった祐一と麗奈。
『ああああああああっ! なぜ今っ! 一体誰!?』
2人同時に心の中で叫んだのは、確実である。
因みにこの2人は婚約者同士である。忘れないうちに記憶に留めておいて欲しい・・・
「はーい」
祐一が玄関に向かって返事をしながら、慌てて眼鏡を掛けながら歩いていく。
麗奈はそれを見送りながら、
『あとちょっとだったのに・・・』
と少しだけガッカリしていた。
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