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「うわっ! なんだっ!」
ガターンという何かが倒れる音がして、祐一の驚いた声がした。
「どうしたんですか!?」
麗奈が慌てて玄関に続いている短い廊下に駆けつけると、廊下に祐一が倒れていて見たことのない女性が彼の太腿の上に乗りあがって、祐一とキスをしている・・・ ように見えたが、彼は両手で自分の口を塞いでおり、女性の猛攻を防いでいた。
「ムー!!」
何を祐一が言っているのかは謎だが、彼がその女性に襲われているのは間違いない。
「祐一さんっ! 大丈夫ですかっ!? 警察を呼びますかっ?」
丁度足元に転がっていた祐一の黒い蝙蝠傘を手に呼びかける麗奈。
新手の強盗だったら大変である。
痴女だったとしても怖いが・・・
床で、もがいて逃れようとする祐一。
キスをしようとする女性。
呆然と蝙蝠傘を持ちオロオロする麗奈。
カオスである・・・。
これでは埒が明かないと覚悟をして、麗奈が女性に立ち向かおうと一歩玄関に向かって踏み出した途端に、
「ニギャー!!」
真っ黒い塊が麗奈の顔の横を弾丸のように飛び出して行き・・・
「きゃあああ!」
祐一を襲っていた女性の顔に貼り付き、頭に爪を立てた・・・
「あ、あれ?」
麗奈は思わず、見間違いかな? と目を擦る。
その猫は、祐一の実家である神谷の家にいた、黒猫だったからだ・・・・
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