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玲子の頭の上で彼女を脅していた猫がストンと廊下に降り、祐一の足元にお座りをして毛づくろいを始める。
どうやら黒猫に玲子は許されたらしい。
「クロ、助かった。ありがとう」
「なおん!」
猫が何故か返事をして胸を張る・・・
麗奈は迷ったが、
「クロちゃんおいで」
と、声をかけた。猫はスルリと麗奈に近寄り、彼女の膝にヒョイっと乗って丸くなる。
その様子を玲子と呼ばれた女性は、目を丸くして見ていた。
玲子は祐一と大学生の時に付き合っていた女性で、就職と同時に別れたのだという。
「こんな事になるくらいなら、あの時祐一を選んでれば良かったのに・・・ 私馬鹿よね」
祐一が、非常に嫌そうな顔になる。
「選ぶな阿呆。本来付き合ってたのは俺とで、お前が二股を掛けてアッチに行ったんだろうが!」
「だって、将来有望株だって本人が言ったんだもん!」
口車に乗せられたらしい。
「それで今度は自分が二股かけられて、振られたからって、俺のトコに、く・る・な!」
祐一はソファーに座る麗奈にピッタリくっついている。
「見せつけちゃってさ、何なのよもう!」
「俺の婚約者だよ! お前に関係ないだろ」
麗奈は首を傾げ、
「それで? どうするんですか? このまま朝までずっと喧嘩してても埒が明かないでしょう?」
「そうだね」
そう言って優しく麗奈を抱き寄せて、
「玲子、タクシー呼ぶからお前は帰れ!」
と、ぞんざいな感じで言い放つ祐一。
「え? やだあ。泊めてよ。祐一冷たい! アタシ今日は帰れないんだからさ〜」
この人も言ってる事が無茶苦茶である・・・
「何で帰れねえんだよ」
急にジト目になる祐一。
「だってさあ、帰ったらいるじゃん・・・」
口を尖らせる玲子。
「先輩が居るのよ!」
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