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ー序章ー
＊＊＊
薄暗い山奥にある廃神社に、2人の少年はいた。
2人は中学を卒業したばかりで、春休みが終わると高校に通うことになる。その春休み期間中に、とある目的の為にここを訪れていた。
日中でも薄暗い森の中に放置された、廃神社。
その境内の片隅に、御神木がある。
2人はその御神木の前に並んで立っていた。
「ここだ。この木に向かってロンが吠えていた」
ロンは、近所の老人が飼っている芝犬の名前だ。
「その後に、ここの地面を掘り始めたんだ」
青みがかった髪色をした少年–––元宮界斗は、御神木から少し距離を空けた地面を、持参したシャベルの先で指し示しながら説明した。
その範囲の地面は、犬が中途半端に掘った穴が残っている。
「ふ〜ん」
界斗の真横に立つ黒髪の少年–––元宮心矢は、気だるそうな表情で後頭部を掻きながら地面を見下ろし、間延びした低い声を響かせた。
–––時は昨日にまで戻る。
界斗は昼過ぎに老人宅に向かい、犬の散歩に出た。腰を悪くした老人からの頼みで、最近は界斗が散歩をさせていた。
左側に田圃、右側は森で挟まれた細い田舎道をのんびり歩いていると、急に犬が強い力でリードを引っ張った。
その瞬間、犬の首から首輪がすっぽりと抜け、犬はそのまま走り出してしまう。
「ロン！待て！」
界斗は慌てて後を追いかけたが、犬の足の速さには追いつけず、その姿を見失わないようにするのが精一杯だった。
犬は真っ直ぐ道を走り続けていたが、急に真横の森の中へと姿を消した。
界斗はようやく足を止めてそこを確認すると、草木が生い茂る細い道がずっと奥まで続いていた。
「……はぁ…」
ため息が漏れた。
進むことを躊躇する界斗の耳に、微かに犬の鳴き声が届いた。少なくとも責任を持って連れ出した犬をほったらかして帰るわけにはいかない。界斗は覚悟を決め、目の前の森の中に足を踏み入れた。
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