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道は上り坂が続いた。ごつごつした砂利道が歩きにくく、運動が苦手な界斗の体力をどんどん奪っていく。
しばらく道を進むと、驚きの光景が目の前に広がった。
折れて半壊状態となった鳥居に出迎えられた界斗は、ここが廃神社であることに気づく。
鳥居をくぐり、広い境内を見渡した。奥には本殿が見える。こちらも半壊状態だ。左右には苔に覆われた狛犬。
廃神社は、もの悲しい雰囲気に満ちていた。
ワンワンッ
犬の鳴き声が境内に響き渡る。
左端に視線をやると、そこにある手水舎から更に奥に見えるのは、どうやら御神木のようだ。そこに犬はいた。
界斗が後ろから近づいても、犬は目の前の御神木に向かって吠え続けている。
界斗が「ロン」と大きな声で名前を呼ぶと、犬は吠えるのをやめて、ちらっとこっちを向いた。が、すぐ顔を逸らし、今度は御神木の根張りした地面をクンクン嗅ぎ回り始める。
「帰るぞ、ロン」
うんざりしながら首輪を手に近づくと、犬は急に太い根張りから少し距離を空けた地面を掘り始めた。
……地面の下に、何かあるのか?
界斗は不思議に思いながら、地面を前足で掘り続ける犬をしばらく観察した。
「…、……」
なんだか急に息苦しく、気分が悪くなってきた。
犬は飽きずに地面を掘り続けている。
頭上で、一羽の鴉が不気味に鳴いた。
空気がざわつく。
目に見えない“何か”が、ざわついている……。
そう感じた界斗は急いで犬に首輪を付け直した。
早くここを離れよう。
嫌がる犬のリードを引いて、急いで来た道を引き返した–––……。
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