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「今日から私はあなたのお母さんになります」
ファミリーレストランで、目の前に座る絵美子さんが、真剣な顔でそう言った。予想していたことなのに、私の鼓動がどくどくと速くなっていた。
「お母さんに、なる」
私の声が、少しうわずった。
「はい。そうです」
絵美子さんは、眉ひとつ動かさずにそう返事する。
「それって、えっと、お父さんと絵美子さんが結婚するってことだよね」
私の言葉に、絵美子さんの隣に座るお父さんが、大きく首を縦に振る。
「そうなんだよ。急な話で悪いな」
お父さんは、全く悪びれていない様子で言った。
結婚するのは、別に構わない。お母さんが病気で亡くなって十年が経つのだから、お父さんも次の奥さんを探すのはおかしいことではない。そして、私もこの春で高校ニ年生になった。もういい歳している私が、新しいお母さんができたからって怒ったり悲しんだりすることもない。ただ、私にとって問題は一つだけだ。
「結婚するってことは、絵美子さんも一緒に住むってこと?」
私の言葉に、絵美子さんがゆっくりうなずく。
「その通りです。今日からよろしくお願いします」
絵美子さんは、力強い口調で言った。
私は何も言葉が思い浮かばず、とりあえず小さくお辞儀だけしておいた。
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