今日から私はあなたのお母さんです。

4/7

20人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
今日は高校の創立記念日で、学校は休みだった。そのため、私は平日の朝九時にも関わらず、パジャマ姿でベッドに寝転んでいた。 窓の外からは、小学生と思われる声が聞こえる。世の中は、いつも通りの日常が行われているようだ。そんな中、ベッドの上でゴロゴロとしていられるのは、なんだか勝ち誇ったような気分になっていた。 「梨沙さん、ちょっと良いかしら」 絵美子さんの甲高い声と共に、ドアをノックする音が部屋に響く。私は慌てて飛び起きる。 「は、はい。どうぞ」 ドアが開き、絵美子さんが顔をのぞかせる。部屋の様子を見て、途端に眉をひそめる。 「まだ寝ていたんですか。もう九時ですよ」 「え、だって、今日は休みだし」 「休みだからっていつまでもゴロゴロしてはいけませんよ」 「はい」 私は顔を壁の方に向ける。せっかくの良い気分が台無しだ。 「今日、私は実家に用事があって帰らなければいけません。申し訳ありませんが、一人で過ごしてください。夜には戻ります」 「え、あ、そう」 私は心がパッと明るくなる。もしかしたら一日中、絵美子さんと二人っきりなのではないかと心配だったのだが、それを聞いて安心した。 「朝ごはんと昼ごはんは冷蔵庫に入れてます。温めて食べてください」 ドアがゆっくりと閉じる。玄関の方でバタバタと音が聞こえた。やがて、家の中には静寂が戻ってきた。 絵美子さんは今日一日いない。そう思うだけで、私の心は晴々としていた。 「ヤッホイ」 私はベッドにダイブした。今日は好きなだけ寝よう。そう心に誓った。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加