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雲一つない青い空が広がっていた。夏が近づいていることを感じさせる強い日差しが地上に降り注いでいた。
「次はジェットコースターに乗るよ!」
私が言うと、絵美子さんは口をへの字にした。
「え、ちょっと、さっきも違うジェットコースターに乗ったばかりじゃないの」
「だって早く行かないと、一日で全部アトラクションを回りきれないよ」
「そうですか。分かりました」
絵美子さんは諦めたような口調で言った。
「絵美子。遊園地に来たら娘にとことん付き合うのも母親の仕事だよ。はっはっは」
お父さんが高笑いをする。
「何を言ってるの。お父さんもジェットコースターに乗るんだよ」
「え、あ、そうなの」
お父さんが引きつった笑いを見せる。
今日は家族三人で遊園地に来ていた。留美からもらったチケットを、結局は彼女の言う通りの使い道にすることにしたのだ。
「はあ、はあ。なかなかハードね」
ジェットコースターを降りた絵美子さんは、フラフラした足取りだった。
「いやあ、昔はこんなのも余裕だったのにな。歳をとるのは嫌だな」
お父さんは強がりなのか何なのか、笑顔でそう言った。
「ねえ、お母さん。楽しい?」
私は絵美子さんに問いかけた。絵美子さんは少し驚いた表情を見せたが、すぐに優しい微笑みを見せた。
「うん。楽しいわ」
絵美子さんが言った。私もニッと笑顔を返した。
「よおし。じゃあ次のアトラクションに行ってみよう」
私はお父さんと絵美子さんの手を握り、引っ張る。
「ちょ、ちょっと」
「おいおいおい」
二人の慌てる声が聞こえたが、私は構わずに引っ張っていく。
「ゴーゴーゴー」
子供連れの家族や、カップル達が歩く中を、私達は遊園地を駆け抜けていった。
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