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都内某所。
広い道の交わる交差点を途切れることなく車が行き交い、立ち並ぶビルの前で大勢の人々が信号待ちをしている。
突然、その人たちの前に一台の車が乱暴に現れて停まった。ドアが開き、サングラスの男たちが最前列に立っていた少女を無理矢理、車に連れ込もうとする。
「きゃー！」
少女は悲鳴を上げ、必死に抵抗する。
周りの人たちは何事かと驚いたまま、石のように固まっている。
半ば強引に少女を引きずり込み、ドアを開けたまま車は走り出す。
そこに一人の男が車へ駆け寄り、中に飛び込む。
「失せろ！」
男が少女に叫ぶ。
「？」
少女は一瞬、きょとんとなる。
「？」
サングラスの男たちも、突然現れた男に驚いている。
「間違えた。伏せろ！」
車に飛び込んできた男が言い直した。
少女がサッと体を丸めると、男はサングラスの男にパンチを入れる。
男はサングラスの男と揉み合い、少女は車外へ振り落とされる。
男たちは激しく争い、サングラス男の一人は殴られて気絶し、もう一人は殴られてすっ飛び、運転する男にぶち当たる。
「うわ！ バカ野郎」
交差点の中で大きくハンドルを切った車は対向車線に飛び出し、猛烈な勢いで走ってきたトラックに向かっていく。
「うわー！」
車内にいた三人が同時に悲鳴を上げた。
タイヤを軋ませる激しい音が響き渡る。
車体が半分の長さになった四人の乗る車は、歩道の大勢の人々の頭上を飛び越えてその先のビルのガラスを突き破って中に飛び込む。
タイヤをロックさせたまま、トラックは車体を大きく傾け、そのまま交差点の中央で横転した。
高級高層マンションのような病院。
病室にコンピューターや数々の最新ハイテク医療機器がずらりと並んでいる。その機器の中に埋まるようにしてベッドが置かれている。
ベッドに寝ているのは連れ去られようとする少女を助けた男。
ベッドの横でもじゃもじゃの白髪の怪しげな初老の男が、横たわる男を見ている。
男の名前は大河原博士。
病室にはもう一人、コンピューターの画面を見つめる鉄仮面のような顔の不気味な若い助手の男がいる。
不意にベッドに横たわっていた男が目を開ける。
「お、繋がったぞ」
大河原博士が嬉しそうに言った。
ベッドの男は起き上がり、きょとんとした表情で辺りを見まわす。
「ここは？」
「おめでとう。君は助かったんだよ。自分の名前は言えるかね」
男は両手で頭を押さえる。
「頭の中がぐるぐる回っている。爆発しそうだ」
「じきに落ち着くよ」
男は博士を見上げた。
「本当だ。霧が晴れていくみたいにすっきりしてきた」
「じゃあ、自分の名前は言えるね？」
「えっと、俺は・・・・中村翔平、二十九歳、住所不定」
「余分な事は言わなくていい。質問されたことにだけ答えなさい」
「はい」
「体のどこか痛みはあるかね」
「痛みは・・・・特別ないですね」
「気分はどうだ？」
「凄くいいです。ここはどこですか？」
ベッドの男、中村翔平はきょろきょろと辺りを見まわした。
「ここは政府の秘密機関だ」
博士は大真面目になって言った。
「は？ ？ ？ ？ ？」
「これから重大な事を伝えなければならない。実は」
博士はもったいぶったように言葉を切り、翔平を見る。
「実は、君は死んだんだ」
翔平、ガーンと打ちのめされたようにベッドに倒れそうになる。
しかしすぐに立ち直る。
「何バカなことを言ってるんですか」
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