今日から私は正義の味方

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 一流ホテルのようにバカでかく豪勢な病院のロビーのソファで、多くの人がくつろいでいる。  翔平と大河原博士もコーヒーの置かれたテーブルを挟んでソファに座って話をしている。 「君が詐欺師でコソ泥常習犯の悪党だと警察から連絡があった時には、すでに手術は始められていた。始めてしまったものは仕方がない。全ては完璧に行われた。そこで一つ訊きたい。何で君は自分の命を犠牲にしてまで少女を救おうとした?」 「だから、善良な市民として目の前で犯罪が行われようとしているのに」  そう話しかけて、翔平は頭を抱えた。 「痛たたた」 「君もバカだな。さっきから何度も言っているように、頭に埋め込まれた超小型高性能コンピューターが君の思考と身体機能を制御している。嘘はつけんぞ」 「畜生」  翔平は大河原博士を睨んだ。そして再び頭を抱え込む。 「痛たたた」 「悪態もダメだ」 「・・・・一文無しだったから、すぐに大金が欲しかった。だから金持ちの家の娘を誘拐してやろうと付けていたんです!」  最後のほうはやけくそになったように言った。 「獲物を横取りされたってわけか。カカカカカ」  大河原博士は妙な笑い方をした。 「そして小悪党がヒーローマンになった。最高だな」 「ヒーローマンて、何ですか?」 「よくあるだろ、スーパーマンとか、ウルトラマンとか。それに倣って私が名付けた。ヒーローになるべき男。正義の味方ヒーローマン!」  大河原博士は自分がヒーローになったような気でいる。 「ちょっと待ってください。ヒーローって、男でしょ? 女ならヒロイン。男のヒーローにまた男のマンが付くって、変じゃないですか? 頭痛が痛いみたいな」  大河原博士、突然打ちのめされたように表情を変える。 「わかっとる。分かりやすくて格好いいからいいんだ」 「それでヒーローマンは何をすればいいんです?」 「弱きを助け、強きを挫く。そのために君は鋼鉄の肉体と、超小型スーパーコンピューターを手にしたのだからな」 「はいはい。自分で希望して手に入れたわけじゃないんですけれど」  翔平は小声で言った。 「いいか、忘れるなよ。君の頭の中には日本政府が数千億円を投じて開発し、これまた数千億円を掛けて造られたコンピューターが入っていることを」 「はーい。ところで、ヒーローマンという呼び方は、何か間延びして格好悪いから、別の名前に変えてもらうわけにはいかないですか?」 「ダメだ」 「じゃ、自分で勝手に変えさせてもらいます」 「ダメだ」 「ふざけんなよ、あ痛たたた」  翔平はまた頭を押さえた。 「懲りないやつだ」 「じゃ、ヒーローマンを少しだけ縮めて、ヒーロマンなんてのは?」 「まあ、それくらいならよかろう」 「よし、じゃあヒーロマンで決まり!」  翔平は嬉しそうに言った。
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