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僕が転校してから1週間がたち、大分クラスに馴染んできた。授業もギリギリだがなんとかついていけてはいる。
そんなある夜、日向に近くの公園へ呼び出された。親に見つからないように外へ出て公園へ向かうとブランコを漕いだ日向を見つけた。
「日向」
「お、来たか俊」
僕を見ると豪快にブランコから飛び降りた。
「親御さんにはなんて言って来た?」
「うるさいからな。見つからないようにこっそりと出てきたよ。」
そういうと日向に苦笑いされ「俺よりも不良だよな」と言って来た。見た目がヤンキーの奴に不良といわれるのは癪だった。
「それで、急ぎの用ってなんだい?」
話をそらすために呼び出した用件を聞くと日向はしどろもどろになった。
目が泳ぎ、頬をうっすらと染める。妙な反応に疑問を持ち、一つ考えが浮かんできた。
「女でもできたか?それならそうと照れずに言えばいいのに」
「違っ...。そうじゃなくて、」
「ならば好きな奴ができたのか。誰だ?刑部か?東か?」
「俺は、俺が好きなのはそいつらじゃなくて」
昔一緒にやったギャルゲーの日向の好みと似た奴らの名前を出したが違うみたい。只、好きな奴がいることは確かみたいだ。親友の恋なら応援したいし、そのためにも相手について聞き出したいところだ。
ずっと言い淀んでいた日向だったが、覚悟を決めたのか僕の方をじっと見て口を開く。
「俺は、俊。お前が好きなんだよ。親友としてじゃなく、恋愛的な意味で」
衝撃の告白に言葉を失う。日向は嘘つく奴ではないし、目を見れば真剣だと言うこともわかる。でも、疑問が出てくる。日向も僕も男同士だ。恋愛は男女がやるものではないのか。よくわからない。
「僕たちは男同士じゃないか。」
「そんなの些細な問題だ。俺は俊という男に恋したんだ。」
混乱してきた。取り敢えずこの場から逃げたくなった。
でも、逃げる前にこれだけは聞かなきゃいけないと思った。
「日向は、その、LGBTなのか?」
「違う。女性は普通に恋愛対象ではある。ただ、俺は好きになったのがお前だっただけだ。」
「そうか」
真剣な眼差しに耐えきれず逃げ出した。動揺しすぎて親に内緒で出てきたことも忘れて堂々と帰ってしまい、大目玉を食らった。
寝支度を済ませて布団に入るが、日向の言葉が頭から離れない。
『ただ、俺は好きになったのがお前だっただけだ。』
これは真面目に考えないといけない奴だ。だから、考えよう。僕にとって竹浦日向という人物は何なのか。
次の日が休みだったことに感謝しながら悶々と考え続けた。
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