Ep.4

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 次第に体が熱くなり、脳がフワフワと浮いてくる。息苦しくて吸ったり吐いたりする毎に呼吸の音がする。  私だけでなく、彼の音まで聞こえて、身体が浮きそうなほどに息がシンクロする。  ようやく離れた唇は私の耳元に近づき「もっとする?」と囁いた。 「し、しません……」 「なんだ。残念。でも敬語使ったからあと1回ね」  彼は再び私の唇を奪った。舌の動きは私の自我を忘れさせていく。  もうどうにかなってしまいそうだ。  自然と彼の背中に手を回しぎゅっと抱きしめる。 「今日はこれでお終い」  はっ! 私、彼を抱きしめた? しかもその瞬間終わられた。どういうこと?  彼を見ると複雑な表情を浮かべていた。  彼は仕方なくキスをしていたんだ。愛を確かめるため。メルヘンの魔法があると信じて。でも、手を回された時現実に近づいた。  きっと私が彼を好きになったら終わりなんだ。魔法は解けてしまう。 「一生お終いです」 「あ、また敬語。そんなにチューして欲しいの?」 「欲しくない」 「何で怒ってんの?」 「怒ってない」  彼には怒っていない。何かを期待しそうになった自分に怒っているのだ。 「嘘だ。俺がチューやめたからでしょう?」  仕方なくキスなんてするからだ。
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