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Ep.1
人生三十年も生きてりゃ浮いた話の一つや二つあるもんだと思っていた。どんなに地味でも普通でも、それが人生ってもんよって甘く考えていた。
だがしかし、そんな人生歩めるのは選ばれし人間のみ。
私に寄って来る男は額に『一発やらせろ』と書いている男だけだ。
一緒に恋をしてくれる人なんて一人も現れず、どの人に恋をしていいかも分からずに20代が終ってしまった。
「莉々果さん、マジでどこにも寄らないんですか?」
「はい。寄りません。あとその呼び方そろそろやめていただけますか?」
「え~今更何なんですか? 可愛いし、いいじゃないですか」
今日は仕事が終って一人で帰っていたはずなのだが、どこからか金魚のフンのようにこの男がついてきていた。
彼との出会いは半年前。彼は中途採用でうちの部署に配属されてきた。
アイドルが活動を辞めて就職したのかってほどに見目麗しい彼は私の5つ下。面倒くさそうな口調が特徴的な彼を私は心の中でナマケモノと呼んでいる。
「これ以上ついて来たら通報しますよ」
「お腹空いた~」
カツアゲでもしに来たのかこのナマケモノは。
「駅前くらいにしか飲食店はありませんよ」
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