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「何?」
彼は噛みちぎり、もぐもぐと食べながら「なんでもない」と言った。
子供のように悪戯な笑みを浮かべる彼。
あんなにドキドキしてたのになんだか小学生の面倒を見ているかのような感覚に陥る。なんだ。さっきのは単にびっくりしただけか。
私は彼の要求に従い果物を食べさせていく。
「お腹一杯。寝る」
私が彼に市販の風邪薬を飲ませると彼は最後に手を伸ばしてきた。
「もう元気でしょう?」
「まだ」
「本当に?」
私は彼の額の冷却用シートを剥がして額をくっつけた。
「もう熱くなっ……」
うなじをグイっと手で押されてキスされた。
何やってんだ私は。そりゃそうなるだろうよ。むしろなんで額くっつけることできちゃうの? 甘えてくるから甥っ子のような感覚に陥ってたよ。
油断も好きもあったもんじゃない。
「んっんっ……」
彼のキスは止まらない。これはもう、荒療法。人に風邪をうつして完治しようという魂胆としか思えないくらいに濃厚なキスをしてくる。
ベッドの上で彼を引き離そうとするが、既にほとんど熱の下がっているであろう彼の力には及ばず、クルっとひっくり返されて押し倒された。
彼の唇は離れることなく吸い付いている。
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