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「でも、もう疲れた。もうちょっと寝させて」
彼は私をぎゅっと抱きしめてベッドの上に倒れ込んだ。
「離してよ」
「やだ」
「離してって」
「一緒に寝る」
「寝ないから」
そんな言い合いを繰り返しているうちに夜更かしした私は温かな彼の体温もあって、不覚にも抱きしめられたまま眠りについてしまった。
「おはようお寝坊さん」
美味しそうな香りで目覚めた私の目が最初に捉えたのはスーツ姿の彼だった。
「おはよう。ごめん。寝てた……」
「うん。二日間、ありがとう」
彼は私に微笑みかける。
外はもう明るくてお昼はとっくに過ぎていた。今日が土曜で良かったとホッとする。
「お腹空かない?」
「空いた」
私はベッドから立ち上がり、リビングに向かった。
テーブルの上にはトマトベースの野菜スープとお洒落なバゲットのサンドイッチ。
「もしかして買い物してきたの?」
「うん。ぐっすり眠ってたし、起きてご飯あったら喜ぶかなと思って」
うん。嬉しいけど、さすがに病み上がりの人にされると申し訳ない。
「ごめん」
「嬉しくなかった?」
「いや、嬉しいけど、身体大丈夫?」
「ばっちり。莉々果に濃厚な看病してもらったから元気になった」
濃密な看病って……
「荒療法でしょう」
「荒療法? 何のこと」
ぽかんとした彼の表情で彼がキスのことを言っていない事を理解する。恥ずかしくて顔が真っ赤になってしまう。
「な、なんでもありません」
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