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とある親子の肖像
小学校最終学年のとある朝。
すどぉおん!
突然の凄まじい地響きで、私はハッと目を覚ました。
「何なの! 地震!?」
咄嗟に頭から布団を被ったが、地響きはそれきり。
外からは小鳥の囀りさえ聞こえる程の和やかさだった。
いや平和だな、と怪訝に小首を傾げていると「ううーん……」そんな低い呻き声が隣室から聞こえてきた。
「パパ、どうしたの!」
自室から飛び出し、ノックもせずに隣室のドアを勢いよく開ける。私の目に飛び込んできたのは、ベッドの下でのたうち回るパパの姿だった。
「なんだ、パパがベッドから落ちただけか」
それはまるで浜辺に打ち上げられたトドのようで……そりゃあ、うちの家は海辺に建っているけれども。
これはないわぁ、と私は思わず溜息が出た。
呆れた事に、パパはうなされながらも未だ夢の中にいるようだ。
贅肉の鎧に守られた体は、この程度ではビクともしないらしい。
「んごごごぉぉぉ」
とうとう大いびきまでかきだしたパパを見て、私は心底イラッとした。
まだ太陽すら顔を出していない。こんな早朝から人の安眠を妨げおって……許せん。
これで風邪を引いても私は知らんぞ。
あーあ、パパも昔はもっと格好良かったのに。
以前に見せて貰った若い頃の写真なんて正にジャ○ーズ系イケメンだった。
幸せ太りというやつだろうか。
結婚してからのパパは、少しずつぽっちゃり体形へと育っていった。
しかしながら、ぶくぶくとここまで酷くなったのは、ほんの数ヶ月での事なのだ。
ママの突然の蒸発、全ての答えはこの一言に尽きた。
家の事は全部ママ任せにしていた私達の生活は、あっと言う間に不摂生なものとなり、それは顕著にパパの体へと現れた。
急激に膨張した体はすぐに限界を迎え、その脇腹の皮を破って血肉が弾け出すというホラーな現象まで生んだ。
これほどの事態になったのなら、少しは反省しそうなものだが。スプラッタな目に遭っても、パパの不摂生は全く止まる事はなかった。
「はあ」と私は小さく息を吐くと、全く起きないパパに毛布を被せてそのままリビングへとおりた。
こうなったら昨日借りてきたレンタルDVDを観て時間を潰すしかない。
暗い部屋で、頭から毛布にくるまりヘッドホンを装着。
ポップコーンがないので、おばあちゃんに貰った金平糖を片手にいざ鑑賞を開始した。
うああ……ぞわぞわとするこの臨場感が堪らない。
やはりホラー映画は心理的にくる日本の作品が最高だ。
丁度、映画がクライマックスに差し掛かった時だった。
パチンというスイッチ音がして、パッとリビングが明るくなった。
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