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馴れ初め
父子家庭の桃花と、母子家庭の陽斗が、一緒に暮らすようになったのは六月初旬の頃だ。
大学教授をしている桃花の父親と、キッチンカーで大学近くに出店していた陽斗の母親。
何度か訪れる内にお互いシングルだということで話があったとか。
そんな男女の恋物語の末、一緒になることを決意したようである。
幼い頃に母親が出ていった桃花にとって、それは複雑な心境でしかなかった。
それは陽斗にも同様で、物心ついたときにはいない父親の存在は不要でしかなかったのだ。
お互いに片親同士で苦労していることを身に沁みて理解しているので、父(母)のためならばと反対などする気はなかった。
ただ相手がどんな人となりか、騙されてはいないかと猜疑心のなか約束の日に出会った人物に驚愕したのだった。
クラスで一番目立つ存在の月森桃花と、クラスで一番目立たない丹生陽斗。
苗字を聞いたとき、もしやという思いとまさかという思いが一致した時だった。
それからはとんとん拍子に事は進んでいき、アパート暮らしだった丹生母息子は、一戸建ての月森父娘宅に移り住んだのだ。
多少のぎこちなさや煩わしさを覚悟していたが、桃花にとって自分とは違う継母の発想に新鮮さを覚え、大学進学をあきらめていた陽斗にとっては援助してもらえる継父に感謝の念しかなかった。
先日、桃花父が講演の出張に陽斗母が同行することになった。
講演は一日なのだがその後、二泊三日の小旅行をする予定なのだ。
もともといつかはと計画を立てていたようで、子供二人の様子をみて今回決断したようである。
――どうやら陽斗は桃花父の信用を得たらしい。
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