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さらっとレグルシュが口にしてしまい、千歳は恐縮する。
数十秒の間、たっぷりと間が空き、宇野木はぽつりと「誰の……?」とかろうじて声に出した。
「レグとの……です」
「う、う、嘘ぉ!? そんな、だって、一言も」
千歳とは対照的にレグルシュは飄々としている。
妊娠している間は発情期がなく、フェロモン量も少量で安定するため、特別な事情がなければ項を噛むのは先送りにしたほうがいい、とバース科の先生に推奨された。
レグルシュとも話し合い、番の契約を交わすのは子供が産まれてからという結論に至った。
項に噛み跡はなくても、レグルシュとの間には特別な絆がある……と、千歳は信じている。
「わあぁ……ごめんねっ。俺そんなの全然分かんなくて!」
「い、いえ。こちらこそ、言い出せなくてすみません」
「よかったねぇ。おめでとう! 女の子? 男の子?」
「そこまではまだ……」
仕事そっちのけで盛り上がる宇野木に、レグルシュは慌てた様子で割り込んできた。
「俺がまだ聞いていないことをさらさらと聞くな」
「はいはい。ごめんね。パパの先越しちゃあ、悪いからね」
そう言い残すと、宇野木はレグルシュと入れ替わる形で、看板を店先に運び出す。
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