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レグルシュはその背中にちっ、と舌打ちをした。
「癇に障る言い方を。嫌なやつだ」
輝くペリドットの瞳を細めると、千歳のほうへ身体を向けた。
首の後ろあたりをかきながら、視線を下へと落としている。
「その……だな。体調のことだけではなく、子の様子も聞かせてくれ。俺には分からないことだらけだからな」
不器用な言い方だが、千歳とお腹の子を気にかけ、そして父親になろうとしてくれている。
オメガであるがゆえに不幸な生い立ちだった。
けれど、オメガであるから、この子の親になることができた。
悲惨な過去の思い出を差し引いても、今の幸せはあり余って両手に持ちきらないくらいだ。
「はい。赤ちゃんのことは全部、先にレグにお話ししますね」
千歳の返事に、レグルシュははにかむようにして笑った。
千歳のお腹を、レグルシュの大きな手が優しく撫でる。
「この子は幸せだ。千歳が母になるんだからな」
「ふふ。格好よくて優しいパパに、早く会いたいね」
千歳は我が子に語りかける。
アルファでもオメガでもベータでも、この子を幸せにしてあげたい。
レグルシュの思いも、きっと千歳と同じところにある。
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