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「ちょっとお二人さん! 除け者にされてるみたいで俺泣きそう」
「す、すみません」
「いちいち冗談を真に受けなくていい」
「ほら、パパになるんだからこれから仕事も頑張らないとね」
「……その呼び方はやめろ」
「満更でもないくせにー」
図星を突かれたレグルシュはむ、と押し黙る。
レグルシュは荷物を運びながら、隣の宇野木に蹴りを入れている。
微笑ましいやりとりに、千歳は笑った。
……────。
「そっちも持ってやるから貸せ」
「別に大丈夫です! これくらい」
宇野木とレグルシュに強く言われ、千歳は予定よりも早く休暇に入った。
千歳の仕事はレグルシュと新しいアルバイトの子が引き継ぐことになった。
接客業が得意ではない、とレグルシュは珍しく謙遜していたが、実際、そんなことはなかった。
休暇に入る前にレグルシュの仕事ぶりを側で見ていて、千歳は驚かされた。
にこやかに愛想よく……とまではいかないが、彼はそつなく接客でも何でもこなしていた。
押し売りのようにはせず、声をかけられたら出向くというのがほとんどだ。
そして、千歳はその光景を何度か目の当たりにして、いささか不機嫌だった。
レグルシュは多分気付いていないだろう。
明らかに女性の客足が増え、中には一目だけ見に来店する若い女性達も増えた。
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