5497人が本棚に入れています
本棚に追加
千歳の勘違いではなく、これは毎日店に立つ宇野木も証言している。
「どうしてそう意地を張るんだ。俺がいるときくらい、別にいいだろう」
「意地なんか張ってません! 意地を張っているのは……レグのほうです。平日の買い物はレグがいないから慣れておかないと。過保護にしないでください」
「お前はよく一人で突っ走るのだから、過保護にもなる」
レグルシュの片手には買い物袋が一つ。
千歳とレグルシュの間に、もう一つが宙ぶらりんになっている。
葉物の野菜と卵しか入っておらず、軽い。
「レグは……鈍感過ぎます」
「はあ? ……だからそれは。気付かないのは悪かったし、千歳が言い出しにくいような空気をつくったのも、俺の責任だ。まだ不満があるのか。あるのなら今ここで全部言え」
鈍感過ぎるのは、自身の魅力についてだ。
芸能界にいてもおかしくないくらい、恵まれた容姿をしているのに、レグルシュは「見た目が物珍しいだけだろ」の一言で、ばっさりと類まれな美貌を切り捨ててしまう。
千歳の言いたいことは伝わらず、レグルシュは妊娠に気付かなかったことを謝罪する。
「それは、もういいんです。僕のほうが悪いですし。……疑うわけではないんですが、最近、お客様がレグの話ばかりするから……」
「だから何だ?」
「……だから、その……ですね」
最初のコメントを投稿しよう!