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顔馴染みのご近所さんには、いつも可愛いね、と声をかけられるのが嬉しい。
レグルシュは自分の膝に斗和を乗せ、自身がつくったかぼちゃの離乳食を食べさせようとしている。
苦戦している様子を見て、千歳は無駄だと分かっていながら声をかけた。
「ご飯あげるの、代わりましょうか?」
「いい。俺から食べさせたいんだ……ほら、斗和。今日は甘いやつだぞ」
スプーンを近付けさせると、匂いをすんすんと嗅ぐ。
初めてのかぼちゃはあまりお気に召さなかったようで、ぷい、と横を向いた。
渾身の手作り料理を振られてしまい、レグルシュは悲しそうな表情をする。
ピーマン嫌いのユキに、悪態をついていた頃をふと思い出し、今との違いに千歳はくすっと笑った。
「斗和。パパのつくったご飯美味しいよ。あーん、は?」
「やーっ!」
今日はいつもより不機嫌だ。
斗和の動かした手が当たり、レグルシュの持っていたスプーンを飛ばしてしまった。
かぼちゃのペーストが、白いシャツの肩辺りにかかってしまう。
「あ……こら。斗和!」
千歳が鋭く名前を呼ぶと、斗和はついに泣き出してしまった。
以前まで「好き嫌いするな。我儘言わないで食え」と一喝していたレグルシュは鳴りを潜め、眉を下げ、ただただ悲しそうな顔をつくった。
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