第一歩「きみと。」

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「何まだ寝てんだよ…。お前は! 俺より早く起きて! 飯を用意するんだよ!」  私の朝は、そんな声で始まる。  起きないことはない。かなりの力で、まだ治っていないアザ部分を蹴られるから。  眠い目をこする暇もなく、よろよろと体を起こす。  向かう先は、トイレでもなく、洗面所でもなく、キッチンだ。  まずは、冷蔵庫を開ける。何もない。  次に、冷凍庫を開ける。冷凍食品が、少しだけあった。  それを取り出し、皿に盛りつけ、電子レンジへ。  暖め終わるまでの時間は、苦痛だったりする。  何もすることがないので、目に入って来る光景をただ見るしかない。
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