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「帰るッ…私…帰るッ!!! ───アンタと喋ってたら…殺されちゃう…! ───もう話しかけて来ないで……! 私に…関わんないでッ────!」 ピンヒールのパンプスを手で抱え、木野瀬芽美は裸足のままよろよろと走って行った。 私も立ちくらみのような眩暈を覚え、背面にあるブロック塀にもたれかかった。 もたれかかったまま、再び京帝医科大学病院を見上げた─── ───凉…? ───もしかして今─── ───そこにいるの───? 病院の窓の中に凉を探していると、ポケットに入れた携帯電話がLINEの通知を告げた。私は携帯電話のロックを解除し、LINEのアプリを開く。 『深月今日検査だな! 苦手な採血、頑張ってこいよ!』 翔ちゃんからのLINEに、私は今日自分が検査だったことを思い出す。余命を1日でも伸ばすための、治療方針を決める検査───今日の検査も凉が私の体を心配して依頼し───優君が準備をして、私に連絡をくれたものだ。 私はおぼつかない足取りで歩き、呆然と病院の門を潜った。 もしも私の憶測が───真実だったら? 翔ちゃんは何らかの理由で木野瀬芽美が私に浅井冬馬を仕向けたことを知り───私の家に入る浅井冬馬を目撃した。 そしてプランター下に隠した家の鍵で自分も家の中へと入り、私の首を絞めあげていた浅井冬馬を見つけて殺害した─── そして凉と協力して───浅井冬馬を病院付近の雑木林の土の中へ埋めた─── 信じたくないのに───そう考えれば考えるほど、翔ちゃんが急に病院のカフェを辞めて沖那覇に行くと言った理由も、凉がいなくなった理由も説明がついた─── 私は採血の受付を終え、検査室前の椅子に腰掛けた。目を閉じて蘇るのは、高校の頃2人でふざけあっていた───凉と翔ちゃんの姿だった。
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