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《Side:Ryo.K》 1週間程前の、午後だった。 2台ある携帯電話の、1台だけが鳴った。 画面に表示された名前を見て、とうとうこの日が来てしまったなと、そう思った。 今日が終われば、全てが終わる。 これが俺の、最後の仕事だった。 この日が来て欲しくないと、ずっと思っていた。 矛盾しているのだけど、俺はずっとこの半年と少しの間、そう思って生きてきた。 覚悟を決めて、俺はその電話を取った。 聞き慣れた声の電話の相手は俺を気遣ったのか 、感情を最低限しか入れない喋り方で話し始めた。 俺もその気遣いに応えるように、感情を抑え、淡々と相手の話を聞いた。 要件だけを話すと相手は電話を切ろうとし「大丈夫か」と言葉をかけてきた。 俺は「大丈夫です」とそれだけ答えた。 数日前に初雪が降った。 空から降ってきた小さな雪を見て、時の流れを実感した。 俺が深月と最後に会ったのは、梅雨入りしたばかりの6月半ばだった。 笹原の交渉の条件を飲み、家に帰って来ると深月と奏がいて、深月は気まずそうな顔で俺を見た。 あの時深月は夏だというのに黒いブラウスを着ていて───奏は白いボーダーTシャツに、紺色のズボンを履いていた。 変な事を、覚えている。 深月と初めてデートをした時の服装は、覚えてなんかないくせに。
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