【13】

2/6
前へ
/157ページ
次へ
笹原が沖那覇で深月と奏と別れてから、俺は毎日笹原と会っていた。 この3ヶ月の間で───俺は初めて笹原と、本当の友達になれた気がした。 その友達の笹原の計画通りに、俺は今日、深月が再び入院した京帝医科大学病院へ向かう。 芽美に15年前の犯罪と不倫を暴露され、クビになったあの日から、一度も病院には顔を出していない。 「真っ黒いサングラスと、マスク。 んで、目深に帽子かぶって来るんだな。 もういっそ───目出し帽でもいい」 俺が病院に行く事を少し前に知った優は、俺にそうラインを送ってくれた。 ユーモアのある優らしい励まし方だなと、そう思った。 俺はシャワーを浴びて着替え、深月の入院する病院へ向かう為に、車にエンジンをかけた。 深月と顔を合わせるのは、半年ぶりだ。 俺と会っても喜ぶわけない───そう思うとルームミラーに映った自分から俺は無意識に目を逸らしてしまった。 深月が病室で待つのは、笹原か奏─── 笹原は度々、深月が本当は俺に会いたがっていると言っていたが、そんな事はない。 俺の事なんてきっと、心の片隅にもない。 深月は笹原を選んだのだ。 離婚届と短い手紙を置いて家を出て行った俺に───何の連絡もよこさない。 それは紛れもなく───深月が笹原を選んだことの証明だった。 仮に深月と離婚したら───奏には定期的に会えるだろうか。 奏は俺の事を、今どう思っているのだろう。
/157ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1414人が本棚に入れています
本棚に追加