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車の中で音楽をかける気にはならず、俺は無音のまま運転をして病院に向かった。
ああ。
こうなるしか
こうする事しか、できなかったのか
これで本当に良かったのか
正しかったのか
全く分からない。
でも俺がこの結末に納得していないとしても
確かにこれが
笹原の理想通りだという事には変わりない。
芽美から電話が来た時は驚いた。
芽美はここ数ヶ月、自分が正体不明の人物から深月の命を狙うなら殺してやると脅されている事を打ち明け───脅しているのが俺なのかと尋ねてきた。「古賀深月に手を出すな」と、男の親指と共に手紙が送られてきたとも言った───
俺は知らないと答え、直ぐに笹原を問いただした。
知らないと、笹原は言った。
浅井冬馬なんて男、殺してなければ会ったことも無いと。笹原は困った様に笑い、そもそも古賀は俺が人を殺すような人間に見えるのかと、聞いてきた。
「見えるよ」
俺が答えると、笹原は驚いた顔をした。
「深月の為ならな」
俺は付け足してから、笹原の顔を見た。
「なるほどねぇ」と笹原は苦笑いした。
笑うと、猫みたいになる笹原の顔。
「もし俺が本当にその男を殺して埋めてたら、古賀はどうすんの?
───自首しろって説得するわけ?」
俺は黙った。
正直俺は浅井冬馬みたいな男、死んで当然だと思っている。
芽美から聞いた話だが───浅井冬馬は自らを殺し屋や殺人代行者と名乗っては、闇サイトなどで殺せる人間を探していたらしい。
自分より非力な女で───苦しんでいるのを見て楽しめる美人が良いと───
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