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「そんな怖い顔しなくても」 黙っている俺を見て、笹原は腰掛けていた椅子から立ち上がった。 そして今度は、ニヤッと少年みたいに笑ってみせる。 「こんな事件3ヶ月かそこらで解決するよ」 そう。 この事件は一昨日、急展開を迎えた。 警察に犯人からの手紙が届き、事件は終わったと新聞の隅っこに書かれてあった。 浅井冬馬が殺人願望のあるイカれた男だった事もあり───ワイドショーでは死体が発見された時ほどの騒ぎにはならなかった。 左斜め前方に見えてきた、京帝医科大学病院。 半年前までここで働いていたのに、今はなんだか初めて見るような感覚がした。 深月の病室は、4階の1番奥───417号室。 働いていた頃とは違う患者専用の駐車場に車を止め、俺は車から降りる。 淡いブルーの封筒と、茶色い手提げ袋を忘れずに持って、車の鍵を閉め、数分歩いて病院の自動ドアをくぐった。 日曜日の病院は静かだ。 エレベーターで4階まで上がり、ナースステーションに声をかけた。 看護師は俺が古賀凉だと分かると驚いた顔をし、その動揺を隠しながら深月の病室に入る際の注意事項を説明した。 俺が此処の医師だった事を知っていて、きちんと知らないふりをして注意事項を説明をしてくれるのは、この看護師のせめてもの優しさな気がした。 説明を聞いた俺は礼を言い、417号室に入った。 コンコン、と2回───部屋の扉をノックした。
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