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「お互い、今1番会いたくない人物と会っちゃったって顔してますね」 笹原は俺と宰明さんの顔を見て笑った。 宰明さんはそのまま笹原の方に歩み寄り、笹原の胸ぐらをぎゅっと掴んで自分の方に引き寄せた。 「なんのつもりかな翔平君。 …お父さんとお母さんを早くに亡くした君を───色々助けてやったのを、忘れたのかな?」 「電話で言ったじゃないですか。 交渉をしてもらいにきたんです」 淡々と答える笹原は、いつもの明るくて真っ直ぐで、天真爛漫な笹原とは異なっていた。 「なにが欲しくてこんな事をして─── ───深月をどこに隠したのかな?」 俺は黙って、笹原と宰明さんを見つめていた。 止める事も、加勢する事もできず、俺はごくんと生唾を飲み込む。 「深月が欲しくてですよ─── ───深月の隠し場所は教えられません。 喉から手が出る程欲しい女を───昨日やっと手に入れたんですから」 笹原の挑発的な態度から、目が離せない。 宰明さんは黙って笹原を睨みつけた。 「───本当に綺麗な娘さんですね。 大切に育てられたのがよく分かります… ベットの中でも品が良くて─── どんなに乱れても美しい─── 喘ぎ声を抑えて漏れる甘い声も…快感を堪える可愛い顔も───たくさん見せてくれましたよ」 一瞬、思考が停止した。 笹原の生々しい言葉に───笹原に抱かれて乱れる深月が瞼の裏に現れる。 「───ッ!!───ふざけるなッ!!!」 俺の意識はその声で、現実に引き戻された。 宰明さんが右手を振り下ろした直後、笹原の体が右側に倒れた。 俺は反射的に宰明さんの右手を掴んだ。
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