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「深月は選んで僕の元に来た…
だから今───深月の命を握っているのは僕です。
大切な娘に、愛する妻に───
お二人とも長生きして欲しいですよね?」
笹原はそう言うと、俺と宰明さんに這うような視線を向けた。
俺は言葉を失って、ほとんど手を添えているだけの常態で宰明さんの右手を押さえていた。
宰明さんも笹原の言葉を聞き、絶句している。
あの笹原が交渉の為に深月の命を利用するなんて、考えてもいなかったら。
「僕がお2人にお願いしたい事
───今からお伝えしますね」
笹原はそう言って口元に笑みを浮かべた。
笹原の唇の左側の口角からは、まだ血が出ていた。
口から血を流しながら笑みを浮かべる笹原を、俺は信じられない気持ちで見つめていた。
笹原にだけは、秘密なんてないと思っていた。
裏表がなく、いつだって明るい笹原が、本当の笹原だと信じていた。
「お2人には─────」
笹原は深月の命と引き換えに、どんな交換条件を出してくるのだろう。笹原は俺には電話で、深月と奏以外は欲しくないとそう言っていた。
しかしここに宰明さんが加わると───また違うのだろうか。
もしかしたら笹原は俺だけじゃなくて───宰明さんの立場的にも15年前違法に入手した薬を深月に飲ませた事を───公表させるつもりなんじゃ───
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