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「……なーんちゃって…!
……やっぱ俺向かないよな!こういうの!」
笹原は言いかけた言葉を切って、笑った。
「ナシナシ」と手を横に振っている。
さっきの狂気じみた笹原は消え、笑顔の笹原と、目が合う。
片平裁判所に来た時の、最初の笹原の雰囲気とは180度違ういつもの笹原に、俺は戸惑いを隠せない。
「───2人にお願いがあって…
…今日から3ヶ月間───俺と深月と奏を…探さないで欲しい。
───これを守ってさえくれれば、深月を長生きさせてあげる」
笹原は俺と宰明さんの目を交互に見て微笑んだ。
笹原の言ってる事の意味が全く分からず、俺は宰明さんに視線を向けた。
宰明さんは先程から、表情を変えない。
「……何寝ぼけた事を言っているんだ…!
…どんな手を使っても…
…深月の病気には治療方がないんだ…
キミが深月を長生きさせる?
そんな事出来るわけが───」
「宰明さん」
笹原が宰明さんの言葉を遮った。
笹原の目が静かに宰明さんを捉える。
その目は穏やかで、美しい。
「本当は薄々───俺が言おうとしてる事に気づいてるんじゃないですか?
今この瞬間も───もしかしてって…思ってるんじゃないですか?」
笹原は宰明さんの顔を覗き込む。
まるで子供が、いたずらした後父親の反応を面白がるように。
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