15 黒鳥の里

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15 黒鳥の里

 その後数日、陽向は高熱を出して寝込んだ。  傷のせいだろう、と言いながら、楓と名乗った彼は朦朧としている陽向を看病し続けてくれた。  ようやく熱が引き始め、なんとか会話もできそうになったころ、ここが黒鳥の里という場所だと陽向は楓から教えられた。 「君たちが言うところの闇人の里だね」  無表情に言いながら、彼は陽向の体を起こす。陶器の器に満たされた粥を杓子ですくい、陽向の口元に差し出す彼に陽向はしわがれた声で尋ねた。 「闇人って、あんたたちは嫌じゃないの。その呼び名」 「別に」  食べて、と言うように突きつけられた杓子を思わずくわえると、陽向の里では食べたことがないような塩味と香ばしさが口の中に広がった。 「どう呼ばれようと関係ない。僕たちに似合いの名前だとすら思うよ」  杓子で再び粥を掬いながら彼は皮肉気に唇をゆがめる。 「僕らは闇の中でただ静かに朽ちていこうとしている一族なのだから」 「それを言ったら俺たちだってそうだ。俺たちは、他の種族と交わることはできない。だから……婚姻もずっと一族の中だけだよ」  陽向たち一族の総数はおよそ五百人。最盛期はこの三倍はいたそうだが、その数は減り続け、人口は減少の一途をたどっている。一族の中だけで婚姻を繰り返したせいかもしれない、と光の宮も危惧しているが、交わることができるのは一族の血を持つ者とだけなのだ。  あと百年後、どれほどの人数が残っているのだろう。いや、百年どころか五十年後は。そう思うと光の宮でなくともぞっとする。  けれど。  そろそろと陽向は手を伸ばす。無事な左手で杓子を差し出す彼の手首に触れると、彼が怪訝そうに目を細めた。
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