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車は学校側が出してくれるらしく、校門まで行くと高そうな車が停まっていた。ベ○ツ?
お願いしますと一言。車が動き出す。
場所は把握しているらしくスムーズ、かつ快適な移動時間だった。
わずか10分ほどで到着し、時刻は6時50分。
ちょうどいい時間だ。
「ありがとうございました」
「いえいえ。お気をつけて行ってらっしゃいませ」
頭を下げると優しい笑顔で返される。
かっこいい…!
移動中、俺が暇しないように話題を振ってくれて本当に快適だった。
もう少し話していたかったが待ち合わせ時間が近いので諦める。
扉を閉め、もう一度軽く頭を下げてから集合場所へと向かった。
待つこと3分。辺りが騒めきだす。
朝7時前は、まだ人は少なく混雑はしていないが流石東京。それでも人が多い。
その通勤中の人たちが一斉にざわつき出し、一点に視線を集めるのだ。
まさか…。
もう奴が来てしまったのか。
重たい首を上げ、騒ついている先に視線をずらす。
遠目でもわかる艶のある濃藍の髪。
スラッと伸びた長い手足。
そして存在感を一段と放つ金色に輝くアンバーの瞳。
誰もが見入ってしまう容姿の彼は誰がなんと言おうと生徒会会長、神城蓮だ。
これぞカリスマ。まるでハリウッド俳優のようだ。
会長の事だから偏見で遅刻してくるかと思ったのにきっちり5分前に来ている。
常識人だったのか…!
駅前に着き、辺りをキョロキョロしている会長。もしや俺を探しているのでは…?
はっ、今はお面をつけていないから俺が何処にいるのか分からないのか。
つまり俺から話しかけないといけないのでは?「どうも。青葉圭介の弟です」って?
え、なんか嫌だ!
俺別にカイチョーとデートしたい訳じゃないし!
どうすべきか頭を抱えていると、ふと視線を感じ会長の方を見る。
すると、吸い込まれるような金色の瞳と目が合った。
彼は目が合った瞬間、口角を上げ満足そうに笑う。
あ、まって。周りの女性たちが悲鳴をあげて次々と倒れていく。誰か救急車。
長い足を伸ばし、こちらへ近づく会長。
あっという間に目の前まで来て驚く。
「偉いじゃねぇか。先に来て待ってるとはな!」
そう言って俺の頭をワシャワシャと乱暴に撫でる。
「やめろ!首がもげる!」
なんて言える筈も無くされるがまま。
抗議したら死刑になる可能性があるからな。
気が済んだのか頭から手が離れる。
『なんで俺って分かったんですか』
「直感だ!」
…いや、違ったらどうしてたんだ!
こんな顔面バグのイケメンに急に頭撫でられたら死ぬぞ?
その人ストーカーになるに10円。
馬鹿なことを考えていると、会長が俺を見ていることに気づく。
『なんですか?』
「いや、私服は印象をガラッと変えるな」
…確かに。
会長は白のTシャツにコーチジャケット。下はテーパードパンツと、いたってシンプルなコーデだ。
だが、やはり制服と違い個性が出て印象をガラッと変える。
なんというかこう、俺様感全開だったのが封印されて大人っぽくなっている。
「今日はあの変な面じゃないんだな」
『あれで歩いてたら目立つでしょ』
「…?目立ちたくてあの面を付けているのだと思っていたが違うのか?」
『……違いますよ』
やはりあの面は目立っていたのか。
薄々感じていたが、他から見れば俺は目立ちたがり屋に見えるのか…?
「まあいい。そろそろ行くぞ」
『何処にですか?』
「色々だな、今日は庶民の暮らしを学ぶためのデートだ」
そう言って俺の手を引き、歩き始める会長。
わぁ。カイチョーと手つないでる〜!
…って、違う!
なに微妙にディスってんだこの人。
何が庶民の暮らしだ!この金持ちめ!
俺は殴りたい衝動を抑える。ここは俺が大人になろうではないか。
…ところで、さっきはノリでスルーしていたが手を繋ぐ必要はあるのだろうか。
デートと言っても仮だ。そもそも俺が望んだデートじゃない。
周りの視線も含め諸々、地獄なのだが。
「まずは水族館だな!」
『水族館』
「なんだ。不満か」
『いえ、めっそうもない』
水族館て。
でも俺もあまり行かないから新鮮でいいかも。
会長もワクワクしている様子だし仕方ない。付き合ってやろう。
そのまま俺は会長に連行され、水族館へ向かった。
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