1968人が本棚に入れています
本棚に追加
あの後俺たちはお土産売り場でTシャツやタオルなどを買い、それらに着替えた。
せっかくおしゃれしたのに台無しだ。
…でもこれはこれで面白いからいいかな。
隣を見ると水族館で買ったTシャツを身に纏う会長の姿。
白のTシャツにはカニの絵が描かれているが、その上の文字には「たこ」と書かれている。
これが最近の流行りか?
タコを知らない子供が見たら誤った知識を与えそうだ。
そして絶世のイケメンがこんな変なTシャツを着ているとギャップがえげつない。
これがギャップ萌え……??
未知の感覚に胸を押さえていると会長から変な目で見られる。
新たな扉が開く音がした。
ちなみに俺は水色のTシャツに小さく海の生物が描かれている。
可愛いが男子高校生が着る物ではない気がする…。恥ずかしい。
まあ、そんなこんなで水族館を出た俺たちだが今は近くのショッピングモールに来ている。
どうやら会長が買いたいものがあるらしい。
俺には着いてきて欲しくないようで別行動を提案された。俺はそれに快く頷く。
……いや待て。見られたくないと言うことはエロ本か?
男子高校生というものはすぐエロに繋げたがる習性がある。
俺は探偵心が揺さぶられたがバレたら死刑。
素直に別行動を取ることにする。大人だからな。
どうやって時間を潰そうかと考えていると、ある店が目に止まる。
「クレープ……!」
でかでかと貼られたクレープのメニューに目が奪われる。
甘味担の俺に下剋上か!?
よし。
これは買うしかないな。
即決断し店に足を運んだ。
店内に入ると甘い香りがふわっと漂う。
はぁ、幸せ。
午前10時。昼食が食べれなくなることも視野に入れたが、これを目にして食べない訳にはいかない。
すぐにメニューを開き「バナナ&ストロベリーチョコソースクレープ」を頼む。なんて罪深いんだ。
待っている間、特にすることもなく手遊びをする。
ああ、待ち遠しいよクレープちゃん。
「ねぇ、さっきの見た?」
「見た見た!」
手でカエルを作って遊んでいると、近くのテーブルの女性2人組がなにか興奮している様子。
聞き耳じゃないぞ?聞こえてきただけだ。
「すっごいイケメンだったよね!」
「うん!あんな人芸能界にもそうそう居ないよ!」
「服とか可愛かったし!ギャップ萌えだよねぇ〜」
………。
絶対会長じゃん、もう噂になってるのか!
さすが歩くカリスマ。流石ギャップの破壊力。
「お待たせしました。」
うんうんと1人頷いているとクレープが届く。
なんて美しいんだ……!!これはゴッホの隣に飾られていても恥ずかしく無いぞ。
手を合わせていただきますをする。挨拶は大事。
一口頬張るといちごの酸味とチョコバナナの甘みがマッチしてベリーデリシャス!!
今日1番の至福だ。
クレープを堪能し終え、幸せな気分で店を出る。
他に行きたい所も無いのでモール内をぶらぶらしながら暇を潰す。
本当に会長どこ行ったんだー。
もしかしてエロ本持ってトイレか?
はっ、ダメだ。思考が秋山に寄って行っている気がする!
俺は純粋でなければ。
純粋の定義を考えていると腰に小さな衝撃。
ばっと横をみるが誰も居ない。
え、心霊現象……?と思ったが
「うぅ……っ」
下の方から声が聞こえ、顔を向けると小さな男の子が頭を押さえていた。
良かった、お化けじゃなかった。
「ごめん、大丈夫か?」
と、しゃがみ込み声をかけると顔を上げる。
痛かったのか目に涙が溜まっていた。
あれ、なんかどんどん溜まっていってる気が……。
「うわぁーんっ!!ママぁぁ!!」
げっ、何故泣く!?
俺が話しかけると余計大泣きし出した男の子。うっ、周りの視線が痛い。
小さい子の扱いには慣れておらずオロオロする。
仕方なく俺は、泣かせてしまった要因であろうサングラスを外ずし話しかける。
少しは怖く無くなったはず。
「ママとはぐれたのか?」
「うっ、……ひくっ…」
話せる状態では無いが多少おさまったようだ。
多分迷子だろうな。
どうしよう、このまま放っておけないし。
取り敢えず、落ち着かせる為に背中をさする。
暫くそれを繰り返していると呼吸が整ってきた。
「大丈夫か?」
「……うん」
やっと話せる状態になり安心する。
よく見るとこの子も結構な美形だ。これはいい男になるな。
「ママは?」
「…分からない」
「そっか。……じゃあ兄ちゃんと一緒にママ探すか。お前名前は?」
「……れお」
「よろしくな、れおくん」
面倒ごとは嫌いだが小さい子は好きだ。ショタコンではないが。
れおくんの為にママ探し頑張るぞ!
最初のコメントを投稿しよう!