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源氏の君という男
「ねえ、かなちゃん、かなちゃん! 三時半の休憩に入ったらさ、ちょっくら
話聞いてよ」
それは、池袋のイタリアン、「イルキャンティー・オベスト」の店内。
私たち、そこで、ホールのバイトをしていたの。
源氏の君が、例によって、甘ったるい声で、こそっと耳打ちしたから、
私、すぐぴんときたわ。
まただわ。
またなんか、女のことで、やらかしちゃったに違いないわ。
この男ったら、本当に馬鹿ね。
ちったあ、学習能力ってもんがないのかしら。
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