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「かなちゃん! 僕、ずっと、かなちゃんに会いたかった!」 私、嬉しくって、口がきけなかった。   一年ぶりの再会。 でも、私、源氏の君の容姿が、ものすごく変わってしまったことに驚いたの。 長く伸びた髪、ひげ、着古して、ぼろぼろになったコート……。 まるで、浮浪者みたいだったわ。 でも、微笑みを浮かべた唇は、以前と変わりなく、 瞳は、前よりも一層、輝いていた。 「髪、切っちゃったんだね。でも、かなちゃん、短いのも似合うよ」 「泣き虫かなちゃん。やっぱり、僕が守ってあげないと、だめだね」 そう言われて、気が付いた。 私、いままで、源氏の君に、守られて生きてきたのだわ。 なんにせよ、適当で、行き当たりばったりの彼のこと、 ずっと、守ってきたと思ってたのに、 実は、全然、逆だった……。
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