営業マンのあたし、保坂先生との出会い

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営業マンのあたし、保坂先生との出会い

半年後、晴れて社会人1年生。 研修は午前が講義、午後は先輩と得意先回り。 初めましてとご挨拶しながら先輩のやり方を見てメモして、担当の方の名前と顔を覚える。 営業って常に勉強が必要。 英文科卒で医療の知識は皆無に等しいあたしは、休みの日もほぼ勉強で終わるし、歩き回るから足はパンパン。 社会人って厳しい、早く慣れたいと思いながら、飾ってある桜貝を手のひらに乗せてみた。 ふっ、と汐の香りがして、あたしは海にワープ…なんてことはない。 あのときの先生ほんとにいるのかな、と思うけど、ここにある桜貝が、先生の存在を証明してる。 てことは…あたし、未婚の母になる可能性があるってこと? それ困る、高校以来彼氏いたことないし、未だ処女だし…気をつけよ! とはいえ、今は自分のことで精一杯、彼氏いても付き合う余裕ない。 それより勉強しなきゃ、プレゼンあるし時間足りない! そんな毎日の、日差しが強い夏の夕方。桜台病院に寄ったあと、近くの公園にある木陰のベンチで休んでた。 すると女性の苦しそうな声が聞こえてきて、見回すとお腹を抱えて辛そうな女性が! 咄嗟に駆け寄り、大丈夫ですか、と声をかけて脈を取り、そばにある病院に行きましょう、と伝える。 遠慮されたけど、受付に電話して一緒に行くことに。近すぎるとタクシーも呼べないなと思いながらゆっくり歩いてると、お手伝いしましょうか、と後ろから声かけられた。 その低音ボイスに振り向くと 「そこの病院に勤めてる者です、産婦人科医の保坂と言います」 名札を見せてくれて、先生が女性を支えて歩く。その間にいくつか質問して、病院につくとすぐに診察室へ。 会社に電話して事情説明したら直帰の許可が出て、病院で緊張しながら待ってた。 女性は熱中症になりかけてたようで、処置が早くて助かった、ありがとう、と先生にお礼を言われ、助けてくれてほんとありがと、これ気持ち、ってスポーツドリンク渡された。 喉カラッカラ、持ち歩いてる水筒も空っぽだったからありがたくいただいたけど、このドリンク…駅で渡されたのと同じ? それに保坂先生の横顔、あのときの先生に似てる。 そう思うと声も似てるような…そんなわけないか、と思ったとき 白衣の胸ポケットの、わずかなふくらみに気づいた。
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