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その証拠に、睨むだけでいつもみたいな皮肉混じりの反論もしてこない。
本当に凄いなぁとかシェイカーが感心していた頃には、オフィーリアはヴァイス郊外にある自宅へと戻っていた。
「ただいま。ルフィナ、トウジ、今帰ったで」
「……む」
「お帰りなさーい」
荷物をテーブルに置くオフィーリアは、余程機嫌が良いのか笑みを浮かべて、鼻歌まで口ずさんでいる。
「何か、あったか」
トウジが聞くと、オフィーリアが笑う。
「あんな。イグレシオン署でおもろいやつと逢うてもうて。あれ。まるで一時期荒れてた、昔の俺見とるみたいやったなぁて」
「そうか」
トウジは右目がエメラルドグリーンで、左目が蒼のオッドアイだ。
そんな両目を細め、楽しそうに主張中の出来事を話しているオフィーリアの頭を、まるで慈しむように優しい手付きで撫でた。
「楽しかったようだな。良かった」
「おう。久し振りにめっちゃ楽しかった。やから、また逢いに行ったろ思てな」
「そうだな。また、遊びに行くと良い」
主張の帰り道、オフィーリアがイグレシオン署を訪ねた経緯と理由を少なからず知っているため、まさか喧嘩を売りに行ったとは露知らず、である。
「うん。次が楽しみやわ」
そんなこんなで、本人の預かり知らぬ間にお気に入り認定されたラキが、これからちょくちょくオフィーリアからの突撃訪問を受ける事になるのは、また、別のお話ーー。
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