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「すみません、まったくとんだ失礼を……」
俺がテーブルに噴き出したコーヒーをハンカチで申し訳なさそうに拭く紳士。
「い、いえ、大丈夫です……ゴホッ」
いきなりサビに入るもんだからツボと気管に入ってしまった。ああ、トタン屋根は大至急直そう。
でも、今のラップで何となく伝わったぞ。
嘘みたいな話だが……
「続きです。これは世紀の大発明。
飲めば夜、望む自分が現れる。
まったくの別人格が支配して。
年齢も、姿形も変えられる。
欲望の赴くままに、犯罪も……
そのかわり、薬の効き目は短くて。
気が付けば、自分の部屋で目が覚める。
成し遂げた野望の記憶もおぼろげで……」
普通に話せばいいのに……って、まさにジキルとハイドじゃないか!?
まあ、さっきもなかなか心の闇を解き放っておられましたけどね。
「う、迂闊には、信じられないお話だ」
「そうでしょう。無理も無いけど、実話です」
「本当に、この錠剤を飲むだけで?」
「すぐ分かる。今宵も私は変化する」
えーいめんどくさい!
「そっそれで!?私にどんなご依頼を!?」
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